2020年10月11日 23:35

「ヒメノ」楽曲分析9

今回は4度和声の話ではなく、
特殊な音の使い方を学ぶことになる。
かなり不協和なコードの使い方だ。

上級者のみ対象の話になるので、
初心者はここから引き返した方が
いいかもしれない?(ウソだよ〜)

パスカル・ヒメノ楽曲分析(9)
☆「GIMENO」(ヒメノ)
演奏会用リズム・エチュード第1集
6曲目「Final」(フィナーレ)

この曲のイントロ(1〜8小節目)の
コード進行は以下のようになっていた。

|C|A7|Dm7|G7|
|C|A7|Dm7|G7|

今回は4小節目「G7」についてだ。
とても特殊な使い方をしている。

右手コードは下から
「シ、♯レ、ド」
つまり上の「ド」は、下の「シ」から
1オクターブ上の「シ」を半音超えた
「ド」なので「短9度」になる。
その間に「シ」から長3度上の「♯レ」
が入っている。
数字で書くと「3、♯5、4」になる。

まず常識的な話から始める。
「G7」の時に「3」と「4」は
同時に使えない。
「4」を使う時は「3」の代わりに
「4」を使い「G7(sus4)」になる。
そして「4」が「3」に解決して
本来の「G7」になる。
これがポップス、ジャズ、クラシック、
ほぼすべての音楽で常識的な使い方だ。

ここまでは、あなたも知っていることだろう。

ところが、
それはあくまでも基本的な使い方で、
ジャズ・ピアノ上級者になると、
「G7」でメロディーが「シ=3」の時に
長7度下の「ド=4」を隠し味で使う。
(良い子は真似しちゃダメだよ)

以下のような感じで使う。

右手は下から「ド、ファ、シ」で
左手はベース音「ソ」になる。

この右手コードが4度和声の3種類目
「完全4度+増4度」になる。
(他の2種類は、
今回の分析シリーズで
すでに登場していたよね)

注、上記の話は
読まなかったことにしてほしい。
この押さえ方を使うと不協和過ぎて、
ほとんどの人の音楽では
間違えたように聞こえてしまうからだ。
これを使いこなすには曲全体を、
ジャズ・コード中心に使っていないと
違和感があるはず。
「良い子は真似しちゃダメだ」
というのは、そういう意味なんだ。

       ☆

さてさて、前置きが長くなったけれど、
今回の「ヒメノ」のコードは、
さらにスゴくて、上記の「長7度」を
ひっくり返す(転回する)と「短9度」
になるんだね。
これもかなり不協和音程だ。
そして、さらに左手も見てほしい。
最初はベース音「ソ=1」だけれど、
次に「レ=5」を弾いているよね。

この音は右手「♯レ」と「増8度」になる。
異名同音「♭ミ」で書けば「短9度」だよね。

つまり、ここは4つの音の内、
「短9度」の2音を2ヵ所も使っている。
ただし、この二つ目の「増8度」は
2オクターブ離れているので不協和度は和らぐ。

説明が長くなったけれど、
ここは不協和な音が欲しかったんだね。

       ☆

この後、
いよいよ私が「え!?」と驚いて、
「あ、なるほどそういうことか」と
すごく勉強になったコードが登場する。
お楽しみに!
(続く)


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プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴60年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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