2007年04月02日 09:22

「分析」の楽しさを体験しよう!

今回は、中〜上級者用コード進行の話です。
初心者の方は、どこか1つでも理解出来ればいいです。
何1つ理解出来なくても大丈夫。
必ず役に立つ情報です。
内容は、いつかジャズ理論を勉強すれば、わかります。

では、スタートです。

このブログで最近学びました
カプースチンの「変則的ブルース」

「24のプレリュード 作品53」(全音版)
第15番(68ページ)

この曲のコード進行について質問がありました。
みなさんにも大変勉強になる内容ですので
今から説明します。

原曲は、D♭のキーですが、話を分かり易くするために、
そして曲集を持っていない人のためにも、
「キーC」のブルースに置き換えて説明します。

通常のブルースの5〜6小節目は、
 F 7(サブドミナント、以下Sと略す)です。
(本来の「S」は7thコードではありませんが、
ブルース・フィーリングを出すために
♭7thを加えるのです)。

ところが
カプースチンの変則的ブルースでは
5〜6小節目でE♭m7を使っています。
ここが変則的という1つの理由です。

「一体これは何でしょう?」
というのが今回の質問なのです。

あなたも今から一緒に考えて下さい。

普通「Cのブルース」では「F7」が来るところです。

「E♭m7はサブドミナントなのでしょうか?」

「どこから、このコードが出て来るのでしょう」

(今回はトニック(T)、ドミナント(D)は考えなくていいです)

質問者は、まずF7(sus4)、(以下(4)と略す)
で考え始めています。
基本コードの構成音は「ファ、♭シ、ド、♭ミ」
実際に弾く時は、ベースF音の上に、
E♭、E♭M7、Cm7などを乗せて使います。
これはポップスでも一般的です。

次に考えたのはF 7の代理コードB7。
これを(4)にすると
ベースB音の上に、A、AM7、F♯m7。

しかし、ここまで考えても
E♭m7は出て来ません。

「あなたは、どう考えるでしょう?」

そこで、私はヒントを与えました。

ジャズには、T、D、S以外にもう1つS系の機能があります。
サブドミナント・マイナー、Fmです。(以下、Sm、と略す)
このコード(Fm)の代理は、B♭7、Dm7(♭5)が一般的ですが
さらにD♭M7、Fm7、A♭M7、A♭7などが使えます。
これらのコードに共通している条件は、
Smであるための「A♭音」(♭ラ)を含んでいること。

さて、これでも、まだ、E♭m7は出て来ません。

実は、もう正解が目の前にあるのですが。

ここにあげたコードで
E♭m7と密接に関係しているコードは?

答えは、「A♭7」。

その理由は?

ジャズ理論では常識中の常識、
「ドミナント・セブンス・コードはツー・ファイブに分割出来る」

A♭7を分割すると、E♭m7ーA♭7になります。

ここで、やっと出て来ました。

正式なSmではないけれど、密接に関係しているコードです。

そもそも、S とは、Tでもない、Dでもない、中立的な立場にいる人です。
ブルースの5〜6小節目は中道を歩む人がいるところ。
E♭m7は、T、D、S、Smでもない中立の中の中立。
半音上がると T(Em7)、半音下がると S(Dm7)。
実に、絶妙の位置にいますね。

これで今回の話は終わりですと言いたいところですが、
実は、まだ続きがあるのです。

          ☆

私は、質問者が「F7(4)では?」と言った時、
それでもいいことに気が付きました。

F7(4)というと,
先程のE♭、E♭M7、Cm7がすぐに浮びますし、一般的です。

しかし、これはあくまでも
(ナチュラル)9thを前提に考えています。

それを、♭9thと(4)の組み合わせで考えると、
Fベース音の上に、
G♭、G♭M7、E♭m7がすぐに出て来るのです。

E♭m7「E♭、G♭、B♭、D♭」=「♭7、♭9、3、♭13」

こちらで考えた方が、私の説よりも回りくどくないのでは?

どちらで解釈してもいいです。
まだ他の解釈があるかもしれません。
何か気が付いたらコメントに書き込んで下さい。

結論は、とにかく中立的な立場の人、
拡大解釈した「S」系星人ですね!

        ☆         ☆

お疲れ様でした。
やっと終りました。
今回の話は、まったく理解出来なくていいです。

私の目的は、理論の内容よりも
「分析の過程」を知って欲しかったのです。
自分が知っている知識を総動員して推理していく楽しさは、
推理小説や知的ゲームのようなおもしろさがあります。

私が毎日カプースチンを分析して
「楽しい、面白い」と騒いでいることを、
ほんの少しでも、あなたに体験して欲しかった。
雰囲気だけでも感じて欲しかったのです。

そうすれば、あなたも「分析」に興味を持ち、
私の真似をして、あなたなりのやり方で、
モーツァルトやショパン、
エヴェンスやピーターソンを
研究するかもしれません。

いや、何でもいいのです。
例えば、美味しい料理を食べた時、
「これは、どうやって作るのだろう?」
「材料は、何と何で、味付けは?」
と推理を始めるのです。

そうするとね、いろんなことを分析し始めて、
いろんなことの仕組みを理解して、
自分でもいろんなことが出来るようになって、
人生が楽しくなって来ます。

「分析」ってね、
あなたが幸せになる「架け橋」なんですよ。


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プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴60年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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