2007年03月21日 08:18

カプースチン本格的分析

今回は、前回の「モード奏法って何?」の続編です。
前回の時に取り上げた曲を、さらに深く研究します。

カプースチン「24のプレリュード 作品53」
第6番 ロ短調 アニマート
KAPUSTIN 「 24 Preludes op.53」(NO.6/ B minor)

上記の曲集(全音版)の6曲目(34ページ)です。
ジャズのいろいろな技法が学べます。

「モード奏法」と言っても、
実際は、コード進行と組み合わせて使う場合が多いです。
コード進行のある曲で、1部分だけモードにするのです。
良いお手本がカプースチンの曲で学べます。

        ☆

まず始めは「全体の構成」から理解すること。
あなたの楽譜に以下のことを書き込んで下さい。

1小節目の上に
<1コーラス目>または(1)などと書いて下さい。
以下同じように、
33小節目の上に<2コーラス目>または(2)
65小節目の上に<3コーラス目>または(3)

次に1コーラスを、さらに区切ります。
以下の表を参考にして、各カッコ内の最初の数字の小節の上に
[ A1]、[ B ]などと書き込んでいくのですが、
あなたは、A1と書いたら四角で囲って下さい。
私のこのワープロでは出来ませんのでカッコを使っています。
普通は四角で囲みます。

1小節目の上に、A1と書き、四角で囲む。
9小節目の上は[ B ]、17小節目は[ A2]、25小節目は[ C ]。
カッコは、いりません。四角で囲んで下さい。
以下<2〜3コーラス>も同じように書き込みます。

この作業と一緒に(または後からでもいいのですが)、
各カッコ内の「もう1つの数字」の小節の終わりに、
定規で縦の線を1本加えます。
例えば<1コーラス目>の8小節目の終わりに縦の線を加えます。
こうすると、全体をながめた時に
どこからどこまでが1段落なのかすぐわかるのです。

では、以下の表を参考に作業を始めて下さい。

♪曲の構成
<1コーラス目>
[ A1]=(1〜8)、[ B ]=( 9〜16)、
[ A2]=(17〜24)、[ C ]=(25〜32)

<2コーラス目>
[ A1]=(33〜40)、[ B ]=(41〜48)、
[ A2]=(49〜56)、[ C ]=(57〜64)

<3コーラス目>
[ A1]=(65〜72)、[ B ]=(73〜82)=10小節、
[ A2]=(83〜91)=9小節(4+5)

どうですか、出来ましたら次に進みます。
今度は各小節にコードネームを書き込みます。
(これでジャズ・ピアニストが実際にやっていることを
少しずつ理解出来るようになっていきます)。

<1コーラス目>
[ A1]=(1〜8)から始めます。
1小節目は、<1コーラス目>と[ A1]が書いてありますが、
どこかあいているところに
 Bm7(B dorian) 
と書いて下さい。
これで4小節目まで何も書かなくていいです。

これでは「私、さみしいわ」という人は
|| Bm7 | E(Bass B) | Bm7 | A(Bass B) |
このように4小節を書いて下さい。縦の線は書かなくていいですよ。
小節線ですから。
「そんなことぐらい、わかるわい」
「す、す、すいません」

次に進みます。
5小節目から8小節目までは以下のコードネームを書き込みます。
1小節に1つずつです。
| C♯7 |F♯m7 | B7 | Em ||

ここから作業を進めますが、
気を付けることは、
最初に書き込んだ[A1]、[ B ]単位で
小節番号とコードネームを「常に確認!」しながら進めて下さい。
最後で間違いに気付くと、やり直しが大変ですからね。

斜めの線「/」(スラッシュ)は、同じ小節に入るコードです。
ちょうど下の例ですと、終わりの2小節に2つずつ入っていますね。
3つ、4つ、それ以上の場合もあります。
あくまでも縦の線が1小節の区切りです。

では、以下の9小節目から始めましょう。

[ B ]=( 9〜16)
|| CM7 | GM7 | Am7 | D7 |
| GM7 | E7 | A7/D7 | C♯m7(♭5) /F♯7 ||

[ A2]=(17〜24)
|| Bm7(B dorian) 17〜20 |
| E7 | AM7 | F♯m7(5)/F7 | B♭M7/E7 ||

[ C]=(25〜32)
|| AM7 | *EM7/B♭7 | E♭M7/Cm7 | F7 |
| B♭7/A♭7 | G7 | C7/A7 | F♯7 ||

*26小節目(1〜2拍目)、ここは判断が難しかったです。
前小節のAM7が続いているのか?
ここは、EM7の解釈では変な気もするし?
(左手は「E」単音。右手は「B」「A」「G♯m」の3和音)
2コーラス目の同じ[ C ]の2小節目は完全にE7なのですが。
もう少しカプースチンの特徴を研究してから説明しますね。

<2コーラス目>
[ A1]=(33〜40)
|| Bm7(B dorian) 33〜36 |
| C♯7 |F♯m7 | B7 | Em ||

[ B ]=(41〜48)
|| Cm | G | Am7 | D7 |
| G7/F7 | E7/B♭7 | A7 /D7/*C♯m7(♭5) | F♯7 ||

*47小節目、A7/D7の4拍目にC♯m7(♭5)

[ A2]=(49〜56)
|| Bm7(B dorian) 49〜52 |
| E7/B♭7 | AM7 | F♯m7(5)/F7 | B♭M7/E7 ||

[ C]=(57〜64)
|| AM7 | E7/B♭7 | E♭/Cm7 | F7 |
 B♭7/A♭7 | G7 | C7/A7 | F♯7 ||

<3コーラス目>
[ A1]=(65〜72)
|| Bm7(B dorian) 65〜68 |
| C♯7 |F♯m7 | B7 | Em ||

[ B ]=(73〜82)=ここは10小節です。気を付けて下さい。
|| CM7 | GM7 | Am7 | D7/(F♯7) |
 G7/F7 | E7 | A7/D7 | C7 | F♯7 | F♯7 ||

[ A2]=(83〜91)=ここは9小節(4+5)です。
ただし83小節目にBm7と書き込んでしまえば、
あとは何も書かなくてもいいです。

|| Bm7(B dorian)83〜86 || Bm7(87〜91)||

最後(87小節目から)のスケールは
B dorian に 経過音♯4(E♯)を加えた
[ B-C♯-D-E-(E♯)-F♯-G♯-A ]

=====================

お疲れ様でした。

この作業は、私が毎日「カプースチンの曲」を分析する時に、
まず始めにやっています。
ざっと見て、コード進行と全体の構成を判断します。
そこから、本格的な分析が始まるからです。

各小節のすべての音(右手、左手)を1音1音、
どんなに細かい音符でも
コードネームと照らし合わせて調べます。
(まるで「しらみつぶし」です)。
すべての音が理論で説明出来ます。
当然の事ですが、きっちり作曲されています。

アドリブ・フレーズの作り方、
ジャズ・コードの効果的な積み重ね方
コード進行には書かない小節内でのさらに細かいコード進行など、
理論書などには書かれていない「具体的な実例」がわかり
大変勉強になります。沢山のことが学べるのです。

あなたも早速、勉強を始めて下さい。
初心者の方も、何か一つでも学べばいいのです。
行動しなければ、何も始まりません。

私は全音版4冊すべての曲に挑戦中です。
その成果は少しずつこのブログで報告する予定です。
あなたは私がコード進行を教えた曲だけでもいいですから、
コード進行を書き込んでみて下さい。
みんなと一緒に進歩、向上して行きましょう。

      ☆       ☆

カプースチンの作品をさらに普及させるには、
みんなが理解出来るようにしたいです。
全国のピアノの先生方が理解出来ない音楽では
指導出来ませんからね。

演奏する人も、曲の内容が理解出来れば覚え易くなります。
理論的に覚えたものはわすれませんが、
丸暗記は大変ですし、時間が経つとわすれます。
(バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンなどを
弾く時もすべて同じです。丸暗記はもうやめましょう)

カプースチンの臨時記号が沢山付いた楽譜だけ見ていると、
ものすごく複雑で難解な曲に見えますが、
コードネームで書き出すと
理路整然と和声が綺麗に連結されています。
理論的にしっかり作曲されているので覚えやすいです。
ジャズ理論を学んだ人ならすぐに覚えられますね。
きっちりと「ドミナント・モーション」「ツー・ファイブ」「代理コード」
などを使っています。(ちょっとひねってありますが)

弾くテクニックは別にして、
曲を覚えるのは丸暗記よりも数10倍早く出来ます。
テクニックもあり、理論も学んだ人なら、
どんどんレパートリーを増やせますよ。

弾ける人も、弾けない人も、弾けるけれど弾かない人も
前回のように自分の音楽に取り入れることも大切です。
クラシックを弾いている時でも、
「どこか自分の音楽に取り入れられるところはないか」
と、常に意識する姿勢が大切なのです。
ただ弾いているだけでは「勿体無い」です。

今回は大変に長くなりましたので、このへんで終ります。
言いたいことは、まだまだ沢山あります。
続編をお楽しみに。

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コメント一覧

1. Posted by チョピン   2007年03月22日 00:52
はじめまして、こんばんは。私は今までクラシックピアノを期間だけでは18年くらいやってきましたが、曲は弾けるようになっても、理論的に分析することはできません。ましてや即興演奏なんてできるはずもありません。やりたいとは思っていたのですが、今ひとつそのために必要な勉強を避けていました。ところが、たまたまオスカーピーターソンやビリーテイラーが即興するところをみてしまい、あまりのかっこよさに衝撃を受け、勉強することに決めました。そこで、たまたまテル先生のブログに出会い、勉強の参考にさせてもらっています!カプースチンいいですよね。私も初めて聞いたときは、その新鮮な音楽と、耳障りのよいところが非常に気に入った作曲家です。(私が聞いた曲はトッカティーナでした)
2. Posted by テルさん   2007年03月22日 14:25
チョピンさん、こんにちは。
クラシックを長くやっていたそうですね。これからは即興演奏も出来るようにしましょう。カプースチンもすでに知っていたなら楽譜を手に入れ、ここで言ったことを書き込んで下さい。分析は出来ないそうですが、これをやると少しずつやり方がわかってきます。内容も少し理解出来るようになります。何事も「少しずつ」でいいのです。ぜひ、みんなと一緒に、このブログで学んで下さいね。

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プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴60年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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