走れ正直者

2019年01月03日

あなたへの「お年玉」

今年のこのブログ、スタートは
「私の考えるジャズ・ピアノ」
というような内容から始めました。
(前回の話です)

今回もその続きで(お正月なので)、
あなたに<お年玉>を差し上げましょう。

       ☆

「ある曲を演奏したいと思ったら、
まずコード進行を付け替えること
から始める」という話は、今までに
このブログで何回も話したと思います

例えば、
私が今度この曲を弾こうと思った時、
まずコード進行を付け替えていきます。

あるいは生徒が
「この曲を弾きたい」と言った場合、
それがジャズのスタンダード曲でも、
またはポップス、歌謡曲、童謡でも
ジャンルに関係なく、すべての曲の
コード進行を必ず付け替えるのです。

それはエヴァンスやピーターソンが
演奏したバラードと原曲を比べれば
すぐに理解出来るのでは?

ジャズ理論を知らない人でも、
「原曲とは随分違うなあ」と
聴いただけでわかると思います。

両者が同じ曲を演奏していても、
必ず別のことをやっています。

他のジャズ・ピアニストが弾いている
同じ曲を調べても必ずどこか違います。
つまりジャズは独自の解釈で弾くのです。

注、この話はCDを出しているような
プロのジャズ・ピアニストの話なので、
ほとんどの人は将来(プロ・デビュー
する時?)の話として聞いて下さい。

逆に聴く立場からすると、
その違いを聴くことが
ジャズの楽しみの一つでもあるわけです。

私は昔、昔のそのまた昔、
テリー・ハーマン・トリオという名で
CDを多数出していました。
その時のほとんどの曲のコード進行は
自分独自のものを付けて演奏しています。

以上の理由で、
ジャズ・ピアニストはコード進行を
必ず変えることになっているのです。

自分の解釈、自分のスタイルで弾く
ということになります。

それでは今回の話はこれで終ります。
「バイバイ!」

「あ!テル先生、お年玉がないよ!」

「あ!すっかり忘れていた!ごめん」

普通ならここで
<次回に続く>となりますが、
今回はお正月の特別番組として、
「あなたへの愛のお年玉」編になります。

今回の話を、もっと具体的に説明します。

それでは、いよいよ
ここから
「あなたへの愛のお年玉」
新春特別番組スタートです!

       ☆

どのようにコード進行を付けているのか?
具体的に例の曲で説明しましょう。

☆「走れ正直者」
(ちびまる子ちゃんエンディングテーマ)

ソロ・ピアノでの演奏は、
すでに聴いてもらったと思いますが、
原曲のテーマ「A」(最初の8小節)の
コード進行は以下のようになっています。

(1〜8小節)
|C|C|G|G|
|Am|Am|Em|Em|
注、(原曲は「キーD」ですが、
説明をわかりやすくするために
「キーC」に移調しています)

原曲は
リズムを強調したポップスですから
これで充分なのです。
下手に複雑なコードを付けない方がいい。

しかし今回はピアノ1台で
バラードにするので
これでは間が持たないのです。

それでコード進行を付け替えます。

わかりやすいように、
4小節ずつに分けて説明しますね。

原曲の最初の1〜4小節目は、
|C|C|G|G|です。

これに対して私が付けたコード進行は、

|CM7 Dm7|Em7 E♭dim7|
|Dm7 Em7|FM7 G7 G♯dim7|

バラードで弾くので、1小節に2つずつ、
4小節目は3つ(2拍、1拍、1拍)です。

次の4小節(5〜8小節目)の原曲は、
|Am|Am|Em|Em|です。

これに対して私が付けたコード進行は、

|Am7 Am7(BassG)|
|F♯m7(♭5) Fm6|
|Em7|E♭dim7|

このようになりました。

あなたもぜひ弾いてみて下さい。

右手はメロディー、
左手でコードです。

メロディーは、とても簡単です。

最初の4小節は「ソ」の音を
8分音符で12個、
その後、4分音符で「ラ、シ、ソ」です。

次の4小節(5〜8)は、
同じモチーフで、
オクターブ上の「ド」の音を
8分音符で12個、
その後、4分音符で「レ、ミ、シ」です。

ピアノを弾ける人なら例のピアノ演奏を
1回聴けばすぐわかります。

「どうですか?」
「弾いてみると楽しくなってきませんか?」

(続く)


terusannoyume at 04:38|PermalinkComments(0)

2019年01月02日

ジャズ・ピアノ拡大解釈

あなたへの
「ビッグ・プレゼント!」として
去年最後の日(2018年12月31日)に
贈りました曲、聴いてくれましたか?
(たった2日前ですが…)

クラシック・ピアノだけを弾く人は、
この演奏を聴いて、
当然(全部)楽譜に書いてあることを
弾いている、と思ったかもしれません。

でも実際は違います。

メロディー(単旋律)と
コード・ネームだけの1段譜を見て
弾いているんです。

ジャズを学んでいる人なら当然ですね。

左手の伴奏が書いてある2段譜で
ジャズの曲をいくら弾いても
即興演奏が出来るようにはなりません。

ジャズは(基本的に)メロディーと
コード・ネームだけの1段譜で
テーマとアドリブを弾いていきます。

ですから同じ楽譜を見ていても
弾く人によってまったく違う演奏になります。

その人が
「どれだけいろいろなことを知っているか?」
によって結果が大きく異なるのです。

例えば、左手コードだけの話でも
「G7」というコード・ネームを見て
「ソ、シ、レ、ファ」しか知らない人と
「ファ、ラ、シ、ミ」
(♭7、9、3、13)
または
「ファ、♭ラ、シ、♭ミ」
(♭7、♭9、3、♭13)など、
その他、沢山のコードを知っている人、
この両者が弾いた場合、曲全体の雰囲気が
まるで別の曲に聞こえてきます。

さらに言うと、
いろいろ知っている人なら、
「この曲はあえてシンプルに弾こう」
「隠し味で9thぐらいにしておこう」
「かなり複雑に弾こうかな」などと、
その時々によってコントロール出来ます。

これが私の考えるジャズ・ピアノです。

ジャズの曲はもちろん弾きますが、
それだけでなく
どんなジャンルの曲でも区別なく、
自分なりのスタイルで
即興も加えて
好きなように(自由自在に)弾く。

これを読んでから
あの「ビッグ・プレゼント!」を
聴く(または聴き直す)と、
私の言っていることが、
よくわかるかもしれません。

「この曲はジャズではないし、
演奏もジャズには聞こえない」と
ジャズ好きの人は言うかもしれません。

でもね、私が付けたコード進行を
よ〜く聴いてみて下さい。

もし、これを4ビートで
スウィングして弾いたら…?

でもね、今回はそうしなかった。

なぜなら、この演奏は
西城秀樹さん、
さくらももこさん
に捧げる追悼演奏なので、
弾く本人は、
このスタイルを選択したのです。

ですから
ジャズ・ピアノには聞こえなくても
姿勢(精神)は
ジャズ・ピアノの応用編なのです。

☆「走れ正直者」
(ちびまる子ちゃんエンディングテーマ)

(続く)


terusannoyume at 01:41|PermalinkComments(0)
プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴40年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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