ブルクミュラー25の練習曲の分析研究

2015年01月19日

ブルクミュラー分析(4)

「ブルクミュラー25の練習曲」から
「バラード」(Ballade)分析の続き、
第4回目です。

第1〜3回目を読んでいない人は、
第1回目から読んで下さいね。

今回は「B」(31〜46)で、
作曲技法の勉強にもなりますよ。

「B」31〜46小節目まで。
(全体は16小節で出来ています)

コード進行を楽譜に書き込みましょう。

|C(E)|〜|G7(F)|〜|
|C(E)|〜|G7(F)|〜|
|C(E)|A|Dm|Dm(F)|
|C(G) | G7|C|〜|

コード・ネームの後の(カッコ)内は
ベース音です。
|〜|は前の小節と同じコードです。

少し復習をすると、
この曲の「A」は「キーCm」でした。
そして移行部がドミナント(G)で終り、
この「B」で「キーC」に転調したのです。

同主調への転調ですね。
(平行調、下属調、属調、同主調など
知っていますよね。これらは楽典
ですから必ず勉強しておきましょう)

今回は31〜38までの右手メロディー
について分析します(新発見だと思います)

この8小節のメロディーは〜

|ソ|ド|シ|ソ|
|ソ|ド|シ|ラ ソ|

ここで注目してほしいのは、
(33)「シ」から
短6度上の「ソ」(34)へ行った音が、
(37)「シ」からは
短7度上の「ラ」(38)になっていること。

つまり(31〜33)と(35〜37)
は同じ|ソ|ド|シ|で、
(34)で「ソ」に跳躍し、
次の(38)では「ソ」の全音上「ラ」になり、
この「ラ」がこの曲のメロディーとしての
クライマックスになっています。
(コーダに、これより高い音が
コードとして出てきますが…)

実は、このモチーフ「ソ、ド、シ、*」は
移行部でさりげなく提示されていたのです。

移行部(19〜22)のメロディーを
見て下さい。(コードの1番上の音です)

|ソ|ド|シ|ファ|ですよね。

つまり、これも含めて見てみると、

|ソ|ド|シ|ファ|
|ソ|ド|シ|ソ|
|ソ|ド|シ|ラ| 

「ソ、ド、シ」以外の音だけが
「ファ」「ソ」「ラ」と全音ずつ上がっていく。

このような作曲技法は、ジャズ・スタンダード
「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」のサビを
思い出して下さい。

|♭シ〜♭ミ♭ミ、レ|♭ミ〜♭ミ、レ|
|ド〜 ♭ミ♭ミ、レ|♭ミ〜♭ミ、レ|
|レ〜 ♭ミ♭ミ、レ|♭ミ〜

「♭ミ、レ」は同じ高さのモチーフを繰り返し、
「♭シ」「ド」「レ」だけが全音ずつ上がっていく。

つまり音を少しずつ上げていき、
曲を盛り上げる技法なのです。

この作曲技法を使った他のジャズの曲は、
「飾りのついた四輪馬車」を調べて下さい。

さて、今回のまとめです。

前回学んだ移行部は「A」と「B」を結ぶために
何となく気分で作ればいいのではなく、
徹底したドミナント音の保続、そして
「B」のモチーフまでも予告していたのです。

そして音を1音ずつ上げていき、
クライマックスに持っていく。

さすが<プロの技>だと思いませんか?

(つづく)


terusannoyume at 23:04|PermalinkComments(2)TrackBack(0)
プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴40年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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