2008年04月26日

コード表の問題点(1)

「今日からあなたもジャズピアニスト」
NHK趣味悠々 テキスト ¥1、260

今回は、テキストの108〜111ページにある
「おもなコードネーム一覧」の問題点について、
以前から気になっていたことを書きますね。

109ページの1番下の段、左から4つ目にある
「Bdim」のコードを見て下さい。

下から「シ、レ、ファ、♯ソ」と書いてあります。

結論から先に言うと、1番上の音「♯ソ」は
「♭ラ」になります。

そのコードの横に、新たに書き直して下さい。
下から「シ、レ、ファ、♭ラ」です。

「元のコード」と「書き直したコード」を見比べて下さい。
書き直したコードは、
      きれいに3度音程で積み重なりました。

「♯ソ」の方は、下の音と重なってしまい、
  「ファ」を横に出して書かなければいけません。

もう1つの大切な理由は、
そもそも「dim」とは、どういう意味でしょう?

「減」です。「減音程」

復習しましょう。

長3和音は、「ド、ミ、ソ」(1、3、5)
短3和音は、「ド、♭ミ、ソ」(1、♭3、5)
増3和音は、「ド、ミ、♯ソ」(1、3、♯5)
減3和音は、「ド、♭ミ、♭ソ」(1、♭3、♭5)

この「♭5」(減5度)に注目して下さい。

さらに「dim」コードが4声の和音になると、
クラシックの和声学では「減7」の和音と言います。

つまり「7度の音」が「長7度」や「短7度」ではなく
「減7度」になるコード。

「dim」コード、正確には「dim7」コードは、
<減7度の音程を含んだコード>ということです。

もう1度、書き直した「Bdim」を見て下さい。

「シ」と「♭ラ」の音程は「減7度」。
しかも縦にきれいに3度音程で積み重なりますよね。

「シ」と「♯ソ」では「長6度」。
しかも音符が1つ横に「はみ出して」しまう。

なぜ、こんなことになったのかというと、
「鍵盤上で同じなら、♯と♭、どっちでもいいでしょ」
という考え方が原因です。

これは、多分あなたも、そして、ほとんどの人が
          無意識にやっている間違いです。

ただ、この問題が複雑なのは、
「♯ソ」でも、ある条件が揃うと正解になります。

「どういうことか?」と言うと…

「E7」の代理コードとして「G♯dim」を使い、
メロディーに「♯ソ」が来た時の押さえ方、
その時は、これが「正解になる」のです。

複雑な問題ですよね。

ただ、コード表を作る場合は、
特殊な条件は想定しなくていいはずです。
   
       ☆

この問題、書き出すと大変な量になります。
書くのは「やめようか」とも思ったのですが、
面倒でも、やはり書くことにしました。

その「いい加減ではいけない理由」は…。

天下のNHKが全国民に送る放送のテキストであること。

子供達がヒロコ先生にあこがれて学習する教科書でもある。

その子供達は、これからクラシック・ピアノも学ぶでしょう。
クラシックの楽譜は、このような問題に厳格です。
将来、音大受験の試験や、楽典、和声の授業で、
いい加減な答えを書かせていいのでしょうか?

それから、コードネームのことを、音楽に詳しくない両親や、
クラシック・ピアノの先生に質問してもよくわからない時に、
この一覧表を頼りにしますよね。

「♯と♭、どっちでもいい」なんて教えていいのでしょうか?

この一覧表を作ってくれた方には、感謝しましょう。
忙しい時間を、みんなのために使ってくれたのですからね。

しかし、完璧な人間なんて、ほとんどいません。

あとは私達が気付いた所を、その都度修正していけばいい。
そして、それを他の人達に伝えていけばいいと思うのです。

そういう意味で、この「一覧表」は
私たちにいろいろな事を考えさせる切っ掛けを与えてくれる
「とてもいい教材」になるのです。

「そ、そ、それって、ホメてんの?」(一覧表の作成者)

「当然です。感謝です。ありがとうございました」

terusannoyume at 13:04│Comments(8)TrackBack(0) NHKジャズピアノ講座 

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この記事へのコメント

1. Posted by さちぴょん   2008年04月26日 14:55
5 さすがテル先生! 私もこういう表のディミニッシュを見て「なぜ3度重ねじゃないんだろう?」と疑問に思うことが今までにもよくあったので、スッキリしました! この表だとまともな表記はF♯のだけですものね。でも、たとえばCdimは正確には「ド、♭ミ、♭ソ、♭♭シ」ですよね、第7音のダブル♭というのが実用的でなく感じられ便宜上の書き方が定着してしまっているのかな、とも思いましたが、それにしてもなぜ第5音までわざわざ変えて書かれているのがあるのか、とても謎です。
2. Posted by テルさん   2008年04月26日 15:29
 本文でもチラッと書きましたが、この大問題について書き始めると、一つ一つの場合を検討していかなくてはいけないので、とても難しいのです。
 本当に考えさせられる問題です。
 指摘されたとおり、ダブル♭か、実音かという問題。第5音は?も、そうですよね。
 今まで何となくわかった気になっていたことを、もう1度考え直す切っ掛けを与えてくれる「この一覧表」には、本当に感謝なんです。
3. Posted by yumiko.k   2008年04月26日 23:47
まさしく私に言われているような、胸にずっしり響くお言葉ですね。楽譜の書き方は、テキストがあると助かるのですが
4. Posted by テルさん   2008年05月01日 01:22
 この問題は、プロでもわかっていない人が沢山います。教則本や曲集を出している人でもいるぐらいですから、普通の人ならほぼ全員が当てはまるはずです。
 どうしたらいいのか?私にも対策がわかりません。やはり基本、楽典からしっかり勉強することですかね?
 でも、みんな面倒で、やらないでしょうね。本当に困った問題です。
5. Posted by りんちゃん   2008年05月03日 12:24
5 私も、前から、#で表記すべきか、♭で表記すべきか、気になる時がありましたが、「何か論理的な根拠があるのだろうけどまあ、いいや 」と、何となく、#のキーの時は#で、♭のキ−では♭で、と漠然と使っていましたが、きちんとした理由がある事を知りました。貴重な講義、ありがとうございました。子どもの時、習っていたピアノの先生に、「なぜ、##なんて表し方をするの?1音上をナチュラルにする方がわかりやすい。」と、言ってみたけど納得いく説明をもらえなかった事、覚えています。そして、私自身もうやむやのまま、ずっときました。
6. Posted by テルさん   2008年05月05日 03:19
 「♭のキーは♭…」という考えは完全に間違いですね。キーに関係なく音が上がる時は♯、下がる時が♭が基本ですが、これまた例外があって、その時によって変わります。ナチュラルも使いますしね。簡単に一言では言えません。
 コードの時のテンションなどは、理論的知識がないと正しく書けませんよね。
 これは正しく教わらないと「ほとんどの人は、いい加減」が現状ですね。
 残念ですが…。
7. Posted by りんちゃん   2008年05月07日 22:52
お忙しい中、コメントいただき、ありがとうございます。先生のブログで、大切なのに、知らなかった事、たくさんある事に気付かされます。時間を見つけて、少しずつ勉強していこうと思います。
8. Posted by テルさん   2008年05月08日 04:45
 そうなのですね。当り前のことでも以外とわかっていない。ほとんどの人に当てはまります。
 それを素直に認めて、少しずつ勉強していこうという姿勢がいいですよね。
 ぜひ、細かいことも、しっかりと学んで下さい。

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プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴40年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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