2008年01月03日

「幻想即興曲」分析(8)

前回の分析(7)からの続きですので、
今回は<20小節目>からです。

1つのドミナント・コード(G7)が5小節も続く時、
どの様に変化させると良いのでしょうか?

この5小節を分析した時、
「なるほどね。こんな方法があったのか」と
思わず感心してしまいました。

さすが、ショパン大先生ですね。
「お見事!素晴らしい」の一言。

では、始めましょう。

           ☆

[ A ] b (小節番号13〜24=計12小節)
(前回の解説は20小節目まででしたが、
今回は、その20小節目から始めます)。

原曲の20小節目は
「G♯7」(♯ソ、♯シ、♯レ、♯ファ)ですが、
以下の説明は理解しやすいように半音下げて、
「G7」(ソ、シ、レ、ファ)で説明します。

ここで「五線紙」と「原曲の楽譜」を用意して、
以下の説明を書き出して下さい。
書き出さないと頭が混乱しますよ。

大譜表(2段譜)にします。

5小節に区切って、各小節の最初に
20から24までの小節数を書き込みましょう。

♪左手(分散和音)のベース・ライン(1番低い音)だけを
2分音符で書いていきます。(原曲を見て半音下げます)

<ベース・ライン>
20〜24小節目までの「ベース・ライン」は
以下のようになります。(2分音符で)

|ソ、ソ|♭ラ、ラ(ナチュラル)|シ、シ|
|♭ラ、ラ(ナチュラル)|♭シ、シ(ナチュラル)|

♪左手(分散和音)の1番高い音だけを
2分音符で書いていきます。
20小節目のベース(ソの音)より
10度上の音から書いて下さい。
(原曲を見て、半音下げます)
以下のようになります。

20〜24小節目までの左手の1番高い音。
|シ、シ|♭シ、ラ|♭ラ、(♭)ラ|
|♭シ、ラ|♭ラ、ソ|

♪最後の内声は簡単です。
すべての小節が同じ「レ、ファ」だけだからです。
20小節目の低い音「ソ」と10度上の音「シ」の間に
「レ、ファ」を2分音符で書きます。
(原曲を見れば簡単ですね)
5小節すべてその位置に「レ、ファ」を書いて下さい。

20〜24小節目までの「内声」は、すべて「レ、ファ」。

書けましたか?
文章にすると面倒ですが、要するに、
原曲の左手を2分音符で縦に積み重ねて
和音として書けばいいだけです。

以上のコードにコード・ネームを付けると
以下のようになります。

よくわからなくても大丈夫ですよ。
今から1小節ずつ確認していきましょう。

♪<20小節目> G7
「ソ、レ、ファ、シ」(1,5,♭7,3)

この小節から左手の1番下と1番上の音の
「横の流れ」に注意していて下さい。

♪<21小節目> B♭7(BassA♭) Dm(BassA)
「B♭7」第3転回型。「♭7」がベース音です。
「♭ラ、レ、ファ、♭シ」(♭7,3,5,1)

「Dm」第2転回型。
「ラ、レ、ファ、ラ」(5,1,♭3,5)

♪<22小節目> B dim7
「シ、レ、ファ、♭ラ」(1,♭3,♭5,♭♭7)
フラット2つの「♭♭7」は「減7度」を表しています。

このコード「B dim7」は、「G7」の代理コードです。

「G7](ソ、シ、レ、ファ)に「♭9=♭ラ」を加えると、
「ソ、シ、レ、ファ、♭ラ」になります。そして、次に
1度(ソの音)を省略すると「B dim7」になります。

ここまで(20〜22)の「横の流れ」に注目して下さい。
まず、ベース音が2分音符で上行して行きます。
|ソ、ソ|♭ラ、ラ(ナチュラル)|シ、シ|

それに対して、1番上の音は反行して半音下行。

|シ、シ|♭シ、ラ|♭ラ、♭ラ|

ジャズの4ビートのベース・ラインでも、
例えば、「G7」から「C」へ進行する時、
|ソ、ソ、ソ、ソ|ド|なんて弾く人はいなくて、
|ソ、ラ、シ、レ|ド|とか、ショパンの例の様に
|ソ、♭ラ、ラ(ナチュラル)、シ|ド|と弾きます。

ですから、ショパンの例では、「G7」の中で
ベース音と1番上の音が動いているだけで、
コード・ネームにするとこうなるのですが、
あくまでも上と下の音の流れで覚えましょう。

♪<23小節目> B♭7(Bass A♭) Dm(Bass A)

この小節は<21小節目>と同じですので省略。

♪<24小節目> B♭7 G7(Bass B)
「B♭7」基本型。
「♭シ、レ、ファ、♭ラ」(1,3,5,♭7)

「G7」第1転回型。
「シ、レ、ファ、ソ」(3,5,♭7,1)

前小節(23)から、また「横の流れ」を見て下さい。
まず、ベースは半音上行。
|♭ラ、ラ(ナチュラル)|♭シ、シ(ナチュラル)|

それに対して、1番上の音は反行して半音下行。

|♭シ、ラ、|♭ラ、ソ|

最後のコードは、
「G7」(第1転回型)になっていますよね。
実に上手く出来ています。      
         
<今回のまとめ>

前にも言いましたが、この5小節は「G7」です。
途中のコードの1部分だけ見ると別のコードに思えますが、
大きな流れの一瞬であって、全体的に見ると「ドミナント」
つまり「G7」を装飾しているのですね。

         ☆

原曲を弾いている人、勉強中の人は、
以上の説明をよく理解してから半音上げて書き直して下さい。

原曲(キーC♯m)でのコード・ネームは以下のようになります。

<20小節目> G♯7

<21小節目> B7(BassA) D♯m(BassA♯)

<22小節目> B♯ dim7

<23小節目> B7(Bass A) D♯m(Bass A♯)

<24小節目> B7 G♯7(Bass B♯)


♪「さすが、ショパン先生、勉強になりました」
 「ありがとうございます」

terusannoyume at 01:35│Comments(3)TrackBack(0) 愛と感謝の即興演奏法 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by さちぴょん   2008年01月04日 02:55
テル先生、今年もよろしくお願いいたします☆
お正月から大作をありがとうございます! 以前作った分析用楽譜が、ちょうど半音下げた2分音符バージョンだったので、早速見比べてみました。ドミナントのG7を「装飾している」という動きだったのですか、面白いですね! こういうのは厳密には「和音進行」とは呼ばないのでしょうか? よく見るとメロディーも一番上の音と一緒ですよね、半音上から来ているだけというか。ほかにもこんな作りの曲があるのか探してみるのも楽しそうですね♪
2. Posted by さちぴょん   2008年01月04日 02:56
それにしても、いつも思うのですが、こういう説明を文章で書くのは、とてもとても大変なことではないですか? テル先生の表現力には本当に頭が下がりますm(__)m 楽譜を貼り付けたりすることができたら、きっと簡単で一目瞭然で便利なのに、なんて思いますが、ブログでは難しいのかしら…。余計なお世話だったらごめんなさい(>_<)
3. Posted by テルさん   2008年01月04日 04:26
 和声進行と言っていいでしょうね。「G7」を、ぼかしていく和声ですね。さらに右手は4分音符で前のコードの音を弾いて遅れて解決させ、和声のぼかしに追い打ちをかけている。「一体何の和音なんだろう?」と思わせる。ニクイ演出ですね。
 それから文章は本当にとても大変で、数日に分けて書いてます。楽譜の貼り付けは出来るでしょうが、1音ずつ書き出して考えながら理解させるために、わざとやっている面もあります。いつかは楽譜にしようと思っています。
 気を使ってくれてありがとう。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴40年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
Archives
カプースチン・ピアノ曲集