2007年05月12日

作曲法あれこれ(4)

作曲中の霊感について、ブラームス本人の証言を紹介しましょう。

前回紹介した本からの引用です。

「我、汝に為すべきことを教えん〜
作曲家が霊感を得るとき」(春秋社・2800円+税)

               ☆

♪「夢うつつの状態になると、
私は恍惚状態(セミ・トランス)で睡眠と覚醒の間をさまよっている。
意識はまだあるが、失おうとするちょうど境目におり、
霊感に満ちた着想が湧くのはそんな時だ」(13ページ)

あなたは夢を覚えていますか?
目が覚めた時には覚えていても、数時間後にはわすれてしまいますよね。
印象的な夢は何日も覚えていますが、細かい部分までは覚えていない。

私は、夢の中で素晴らしい音楽を聴いたことがあるのですが、
目が覚めると「それがどのようなメロディーだったか?」は
覚えていませんでした。

ですから「睡眠と覚醒の間」
「意識はまだあるが、失おうとするちょうど境目」なのですね。

しかし、仮に「セミ・トランス状態」で聞こえたとしても、
メロディーを覚えていられるのでしょうか?
わすれないようにするには、どうすればいいのでしょう?
ブラームス先生が教えてくれます。

♪「何にもまして重要なのは、
着想を得たら間髪入れずに紙に書き留めることだ。
記録すれば逃してしまうことがない。
書き留めたものを改めて眺めると、
霊感を受けたあの同じ気分を呼び覚まし、
着想が生み出される。
これはとても重要な法則なのだ」。(66ページ)

♪「意識しつつ求めていた着想が
かなりの力とスピードを伴って流れ落ちて来るが、
つかもうとするのが精一杯で一部しか覚えていられない。
すべて書き留めるのは絶対に無理だ。
一瞬輝いたかと思うと、
紙に書いておかなければたちまち消え失せてしまう。
私の作品に残る主題というのは、すべてこんな具合にやって来る。
それは常にあまりにも驚くべき体験であり、
誰にも話す気にならなかった〜
その瞬間、私は永遠なる存在と波長が合っているのを感じ取り、
これほど身震いを覚えることはない」(93ページ)

現代でしたら、各種の録音機に、
または「シンセ」に記憶させるなどの方法があるでしょうが、
これについては別の機会に話します。

すべてを書き留められないのなら、
残りの部分はどうするのでしょう?

♪「私の作曲は霊感のみが結実したものではなく、
過酷で忍耐を要し骨が折れる労役の実でもある〜
作曲家が何か永遠の価値を持つものを書きたいと望むなら、
霊感と職人芸の両方を必要とする」(80ページ)

「霊 感」=右脳的作曲法
「職人芸」=左脳的作曲法

私は、ブラームスの「霊感」と「職人芸」を
上記のように解釈しています。
ブラームスの証言2行目の「過酷で忍耐を〜」が「職人芸」です。

つまり現実世界での勉強、努力が大切なのです。
どうすれば「霊感」が来るのか、来ないのかはわかりません。
(「作曲法あれこれ」シリーズで解明したいと試みていますが)。

しかし「職人芸」=(自分の腕を磨くこと、勉強、練習)は
毎日、いつでも本人の意志で出来ます。

私たちは、常日頃から学ぶこと、練習することが大切なのです。

terusannoyume at 10:20│Comments(0)TrackBack(0) 作曲法あれこれ 

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プロフィール
坂元輝(さかもと・てる)
「渡辺貞夫リハーサル・オーケストラ」で、プロ入り(21歳)。
22歳、自己のピアノ・トリオでもライヴ・ハウスで活動開始。
23歳、「ブルー・アランフェス」テリー・ハーマン・トリオ(日本コロムビア)
以後19枚のアルバム発売(現在廃盤)。
28歳、ジャズ・ピアノ教則本「レッツ・プレイ・ジャズ・ピアノ/VOL.1」
以後14冊(音楽之友社)現在絶版。
ネットで高値で取引されている?
(うそ!きっと安いよ)
他に、2冊(中央アート出版社)。
音楽指導歴40年。
プロから趣味の人まで対象に東京、京都にて指導を続けている。
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